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5
「というわけでね!俺、キョーコちゃんのマネージャーやることになったんだよ~。あ、それ、キョーコちゃんのスケジュール?」
人畜無害なにこやか笑みを満面に浮かべてやってくるなり、キョーコにそんな突拍子もない事を告げた社…ぽかん、と口を開けて呆然としているキョーコの手にあるラブミー手帳を覗き込んできた。
慌ててパタンと閉じながら、キョーコは冷たい眼差しで社を見る。
「社さんが私のマネージャーなんて…敦賀さんに…何か言われたんですか?ラブミー部の私にマネージャーなんて付くわけないでしょう。むしろ、私が誰かのマネージャーをする立場なのに」
「あ、マネージャーの仕事する時は蓮のやってね。あいつ喜ぶから」
「……社さん。本当の事を教えましょうか?」
「何?なになに?」
「実は私、好きな人がいて、その人に操を立ててるんです」
「!!」
えええ!だ、誰に?蓮?お前脈ありかもしれないぞ?!
あ、いやまてよ…それ不破とか言わないよね…?
いやいやいや、無い、それは無いよなキョーコちゃんに限って。
でもそれらしい男の話は聞かないし、
じゃあやっぱりそれって蓮?!
「キョ、キョーコちゃんそれって…!」
大盛り上がりの社を、冷ややかに見ながらキョーコは言った。
「私には、コーンがいますから」
はっ?
「…コーン?」
「はい」
「彼だけです。私…彼が戻ってくるまでは、恋愛なんてするつもりありませんから。だから社さん、敦賀さんと私をくっつけようとしたって無駄ですよ」
「え…」
「私は、敦賀さんと社さんが期待するような、そういう関係にはなりません。絶・対・に!」
ええええ~~?いきなり前途多難?!
俺、何やってんだろ…蓮の力になろうと意気込んでたのに、なんか…キョーコちゃんところに溝を深めにいったような気がする…「絶対ない」なんて断言されちゃうし…
はー…言えないよ、こんな事…
「社さん?撮り、終わりましたよ?」
蓮が、椅子に座り打ちひしがれた様子の社に声をかけると、突っ伏したままの背中から、くぐもった声が返ってきた。
「…蓮…『コーン』って…誰か知ってる?彼女、その『コーン』が戻ってくるまでは、恋愛をしないっていうんだよ」
「………」
…それは…一生恋愛をしないという意思表示のつもりなのだろう。
コーンが戻ってくるなんて、さすがの彼女でも本当に信じているとは思えない。
でもそれは、彼女の心が弱っている証拠だろう。
辛い時に彼女はいつも、あの青い石に頼っている。手元に石が無いときは、空想上のコーンに。
「あああ、もう、誰なんだろ~『コーン』って~!」
体を起こして両手をあげながら、社は嘆く。
「社さん…それ、俺です」
はっ?
「蓮が?『コーン』なの?それって、どういう事…」
蓮は一瞬言いためらったが、今更社に秘密にするようなことでもないと考えて話し出した。
「実は昔、俺…小さい頃の最上さんに会ったころがあるんです。短い期間でしたけど」
「えっ……ええっ…?」
蓮は思い出しながら、少し笑った。
「彼女、小さい頃は今に輪をかけてのメルヘン好きだったので…俺のことを妖精だと思い込んでいたんですよ」
そこで、ぶはっと社は思い切り噴き、笑い出した。
「ふぁはははは!蓮が?妖精?!お前、昔はとってもピュアなヤツだったんだ…?!」
「なんですか…そんなに笑うことですか?」
話の腰を折られたのに気を削がれ、むっとして口を閉じる蓮。社は慌てて謝って、その先の話を促した。
「いや、ご、ごめん、あまりに意外だったからさ、つい。それで?小さいころの彼女とはどうして会ったの?だいたい妖精ってさぁ…よくお前否定しなかったよな」
「俺…その頃演技にもプライベートにもかなり行き詰まってて…時々川原に行って気を紛らわせていたんです。でもそこは彼女の『泣き場所』でもあったらしくて…。泣いている彼女が俺を見るなり妖精扱いしてきたら、否定なんてできないでしょう?」
「へええ、そうかぁ…小さい頃も可愛かったんだろうなーキョーコちゃん。で、蓮、そのときすでに一目惚れしちゃったとか?」
蓮は困ったように笑う。そんな事は無い…とは言い切れない。
あの瞬間、彼女の泣き顔に気持ちすべてを攫われたのは確かだったから。
「…幼い頃の彼女はいつも泣いていたから…別れ際も泣いてしまいそうな彼女に、悲しみを少しでも癒せるのなら、と青い石を渡したんです…もう、会うことも無いだろうと思いながら…」
「だけど、再会することが出来たんだね」
彼女との、再会…
髪の色も、性格も変わり果てた彼女が芸能界に足を踏み入れようとやってきたとき、
変わらないものなんてないと、冷ややかにそれを見つめた。
変わってしまったのだ。俺も、彼女も。
そう、思っていた。
だけど……
「彼女は石にコーンと名前をつけて今も大事に持っていますよ。最初にそれを見たときは驚きましたけどね、まだ持っていたのかって…」
「蓮…」
真顔になった社が訊ねる。
「それ、キョーコちゃんに話してもいいのかな。っていうか、話すべきだと俺は思うんだけど」
すると蓮はその顔にひどく切なげな哀しみを纏ったのだった。
彼らしくない、見たことも無いその痛々しい表情には、自分の知り得ない彼の、過去に受けた心の傷が見え隠れする。
驚く社に、蓮は言った。
「きっと、言っても、彼女は信じませんよ。俺が『コーン』だなんてね……」
…って、蓮は言ったけどね……
そうは言われても試してみないことには、自称恋のキューピッド役としては気が済まない。そのままにしておいても二人の仲は同じことで、ダメでもともとだろうから。
キョーコは、ラブミー部の仕事をやたらと引き受けるようになっていた。休む合間も無いくらいに。この日も内職のような作業のデスクワークをせっせとこなしている。
その前席を陣取って、社は、蓮が『コーン』だという真実をキョーコに熱烈に語りだした。必要以上に話すのを嫌がる蓮からかなりの情報収集をしておいたから、キョーコの驚きを誘うのは必死だと自負していた。だが、キョーコは全くといっていいほど、表情を変えることがない。
「それで…お話は終わりですか?社さん」
「うん。信じ…られないかな?」
「あたりまえですよ…だって、あまりにもイメージが違いますから。…社さん…前にも言いましたけど私と敦賀さんの仲を取り持とうとするのはいい加減止めていただけないでしょうか。嘘にも程がありますよ、敦賀さんがコーンだったなんて」
「でも、キョーコちゃん…!コーンだよ?本当なんだよ?」
キョーコはもう、何も答えない。社の声が聞こえないかのように冊子の綴じ込み作業に没頭してしまっている。
社は蓮とキョーコの運命的な出会いにそれはもう乙女のようにときめき、キョーコの心を動かそうととにかく効果的に話を打ち明けたつもりだったが、キョーコの反応は思った以上に薄かった。
そりゃ、そんな簡単に信じてもらえるとは思わなかったけどさ…。
だけど、これはもう運命としか言えないじゃないか…!
俺はどうあっても、この二人を取り結ぶ…!!
こうなったら、最後の切り札だ…!!
社は、よろりとふらつくそぶりをして自分の額をかかえるように手をあて、大きく溜息をついた。
「キョーコちゃんに避けられて、蓮のやつ、ショックみたいでさ、仕事もポカばっかりなんだ」
「………」
「それに…これが一番困ってる事なんだけど…あいつ、いつも以上に飯食わなくなってさ…このまま倒れちゃったらキョーコちゃんのせいだからね?」
…俺も大人気ないよな…でもこうでも言わなけりゃ、キョーコちゃん、蓮に関わろうとはしないだろう…。
「………」
反応を見守る社の前で、キョーコは無表情で黙々と作業をし終えて、出来上がった冊子を抱え、部屋を出て行った。
駄目かなあ…やっぱり。キョーコちゃん、頑固だもんな…。
ああ、どうしたら、いいのかな…俺…。
10
翌朝。
「…っ」
キョーコは、菜箸を持つ手にぐっと力をこめた。
早朝、だるまやのおかみさんに台所を借りてのおかず作り。彩り豊かな惣菜を何種類も詰め込み終えて、キョーコは険しい顔で歯噛みした。
社さんは、ずるい。
あんな風に言われたら、気にならないわけがない。
一旦事務所に寄ってラブミーつなぎに着替える。
自転車を、都内のロケ先まで走らせる。
その行動の一つ一つを、愚かしいと思いながら。
敦賀さんに見つからないように、社さんに渡して帰ろう…
だが、そう考えていた矢先に、自転車を押してロケバスの横をすり抜けた所で、まるでドラマのワンパターンなシーンのごとく、まさにちょうど、そのバスから降り立った蓮と鉢合わせたのだった。
「…最上さん……」
蓮の目が、見開かれる。
「……っ…」
なんて…最悪なタイミング…隠れる余地もない…
「ああーっ…!!キョーコちゃん!!来てくれたんだ!!」
その後ろから社が、まるで自分の事のように喜んで、「どうぞごゆっくり」なんて言いながらそそくさと去っていった。
見下ろす蓮に、俯くキョーコ。
…どうしよう、くらくらする。
数十センチ前にしただけなのに、抱きしめられた時と同じくらい、胸が高鳴っている。会わないでいた分、免疫力が薄れてしまっているのかもしれない…。
目をそらせながら、前かごに乗せていた包みを差し出す。
「…敦賀さん、ご飯、ちゃんと食べて下さい」
「…え?」
「社さんに聞きました。敦賀さん、最近ちゃんと食事を取らないって。役者は体調管理をおろそかにしたらいけないんじゃないですか?これ、栄養バランス考えて作ったんです。ちゃんと全部食べて下さいね」
「…ありがとう、嬉しいよ」
「か、勘違い、しないで下さいね。これは、ラブミー部の仕事の一環ですから。同じ事務所の俳優さんが体調崩さないように、気を配るのも仕事のうちで…」
そのとき、共演女優の一人が通りかかり、高らかな声をあげて抗議してきた。
「あっ…ずるーい!敦賀さん、さっき私の作ったお弁当は受け取ってくれなかったのに!そのピンクつなぎの子のは受け取るんですかー?!」
「…っ…じゃ、じゃあ、私これで」
慌てて乗ってきた自転車に跨る。
なんて、迂闊だったんだろう私…ラブミー部の仕事を強調するためにつなぎ着てきたのに、これじゃかえって目立って逆効果じゃない…!
一刻も早く、ここを立ち去らなくちゃ…
「待って、最上さん!」
「…!!」
自転車をこぎ出そうとした所を、蓮は咄嗟に手を伸ばしてハンドルをつかんで止め、キョーコを捕獲する。
バランスを崩しかけたキョーコの背を蓮の大きな手が支える。
逃がしたくなくて思わず体が動いたのだが…蓮は何を言ったものかと迷い、視線を彷徨わせたところで、片手にある包みが目に入った。
…せっかくの社さんの策、有効に使わないと怒られるよな…
「俺…君の作ったものしか、食べないから…」
「え…?な…っ?」
「そういことで、最上さん。俺の健康管理は君の手にかかってるんだ。また作りに来てくれるよね?」
「…無理です…そんなのは社さんに管理してもらってください…」
「社さん、君のマネージャー兼任してるからそんな事までやる余裕無いと思うんだ」
キッとキョーコは蓮を睨みあげた。
「社さんは私のマネージャーなんてしなくっていいんですよ!敦賀さんが言ったんでしょう?!私の所へ行くように社さんに!」
「当然だろ、そうでもしなけりゃ君は俺と会う機会をことごとく失くすつもりだったろう?スケジュール、俺が出るのが決まってる作品にはみんな赤線が引いてあったって、社さんに聞いたよ」
「…っ」
悪びれる様子も無い蓮に、キョーコは絶句した。
「心配してたよ。でも、電話もメールも送れなかった。そんな事をしたらますます君は俺を遠ざけようとするだろうから、ずっと我慢してた。だから、今日、来てくれて、すごく嬉しかったんだ」
蓮の素直な言葉に、キョーコは震え上がった。
「わ、私なんかにそんなこと言わないで下さい!いくらかまって下さっても私は…敦賀さんになにもしてあげられないですから!」
「そんなの、期待してないよ」
そう言いながらも、目の前にいるキョーコに蓮は望みを見出していた。
期待なんていつも渇望してる。
彼女の心が自分へ向くのを、欲しくて仕方のない君を手にできる瞬間を、いつだって待ち望んでいるのに。
今だって、君が俺を心配して来てくれた事が嬉しくて仕方がない。
期待するななんて、出来ない話だ…。
にこにこと嬉しそうに笑う蓮。それに対してキョーコは、なんとか否定しようと、険のある顔を崩さない。
「だってさっき、私がご飯作らないと食べないって言いましたよね?」
「うん、そう。君の作ったものだったら食べるよ」
「ほら!それは私に対する要求じゃないですか!そんなのずっと側にいられるわけじゃないから無理です!私には、出来ません!」
「そうかな」
「そうです!」
なんか…
「そういえば、社さんから聞いたよ?ドラマの主演、降りるって言ってたけど、どうしても君じゃなければ駄目だっていう先方に、降ろさせてもらえなかったって」
「………」
「やるんだよね?というか、やれるの?俺が、手伝おうか?」
おかしい…
私…
「そそそ、その手には乗りませんよ?!大丈夫ですっ。て、適当に済ましますから…っ」
「君が?適当にだって?嘘だろう?仕事には人一倍完璧主義な君が?君の性格から言って、適当な仕事なんてやらないはずだ」
「………」
「俺がちょっと触れているだけでそんなに緊張してるのにできるわけないじゃないか」
「…っ」
だめだ…やっぱり、敦賀さんの前では…誤魔化せない。
「最上さん!?」
気持ちを押し隠す、演技も、出来ないなんて…
見破られるのが怖かった。
だからこそ、
彼に会わないようにしようと思ってたのに…
眠れぬ夜のツケが出たのだろう。
それともあまりの緊張のあまりリミッターがトンでしまったのか…。
目覚めたキョーコは見覚えのある天井に目を瞠った。
「!!!!」
ここ、敦賀さんちだ…
この部屋、代理マネージャーしたときに泊まった部屋…
失敗した!と、キョーコは自分を呪い、ひどくあたふたした。
…これは…この状況は…すごく、まずい…!!
隊長!我々、現在、装備なしでありますっ。
何っ?今敵が攻めてきたらどうする気だっ。
早く、早く逃げるんだ!
聖なる光にやられるぞっ。
「最上さん、起きた?」
「ひっ…」
「まったく馬鹿だな君は…人の心配する前に自分の体を心配したらどうなの?…役者は健康管理が大事なんだろ?」
「っ……敦賀さん…」
どうしよう。
「…っ…あ、あの…」
「何かな」
「介抱していただき、ありがとうございました。もうすっかり体調も良くなりましたので、わたくし最上キョーコは自宅へ帰らせて頂こうと思います」
「………」
蓮の、しらけた眼がキョーコを見る。
「…何?その、時節文みたいな喋り方」
「たっ、度重なるご迷惑も顧みず不義理の限りを尽くしお詫びのしようも…っ」
「最上さん…もしかして、俺を馬鹿にしてるのかな?」
似非笑顔に怯えてベッドの隅へ飛びのくキョーコ。
「ひっ…めめめ滅相もございませんです~~~」
顔面蒼白でがくがくと震え、小動物のように丸まっているその姿。
以前の蓮ならば、そのあまりの怯えように苛立ち、なおさら笑顔と毒言を振りまいていたかもしれない。
「…っ…」
もう、重症だ。
そんな姿に、彼女の想いを感じてしまうなんて。
彼女が怯えれば怯えるほど、自分への気持ちがあるのだと思ってしまう。
そんな恋愛、聞いたこともない…
声をあげて笑い出した蓮に、キョーコは蒼白だった顔を赤くして抗議した。
「~~~~~~~~っ!!わっ、笑わないで下さいよ…っ私、真面目に…っ」
蓮は、笑いをおさめて涙目になりながらキョーコを見た。
「心配しなくても、今は演技指導するつもりはないよ、だからそんなにガード固めなくってもいいから」
「ほ、本当ですね?」
「うん。演技なんかじゃなく本気で臨むから」
「!!!!」
「相変わらず…凄い表情だね最上さん…でも、俺は少しは君の頑丈な心に入り込めたと思ってるんだけど?違うのかな?」
「…っ、や、社さんにも言いましたけどっ、わた、私はコーンに…」
「コーンが戻るまで恋愛をしないなんて無理だと思うよ?君の心は俺に向かっているはずだから」
ま、またこの人は!そんな砂吐きセリフをあっさりと…!
「な、なんで、そんなに自信満々なんですか…」
「俺が相手に演技させるの得意なの、最上さん、知ってるよね?」
そうして彼は、共演する相手を本気にさせる。
キョーコにも、とうに分かってる…臆病な心が本当の気持ちを遮っている事を。
けれど、そんな微熱を含んだ感情に気付いていても、それを認めるのには到底、キョーコの心には自己愛とも言える勇気が足りなかった。
「俺に…その恐怖症を克服させる演技をさせてくれないかな」
だって、怖くてたまらない。
愛されたくても、『愛されたい』と望むなんて、私には、出来ない。
相手を想う気持ちには、際限が無いから。それを失う瞬間に先回りして怯え、その気持ちを封じてしまう。
「最上さん、返事は?」
優しい低音が耳朶を擽って、キョーコの顔を上げさせた。
見守るような温かな微笑がふわりとキョーコを包む。
眩し過ぎて直視なんて出来ないと思っていた、彼の神々しいまでの微笑みに、キョーコは浮かされた様に魅入られた。
そうして深く抉り取られた傷を癒すように、萎えていた心を揺さぶりながら、彼は丁寧にキョーコの想いをすくい上げていく。
「…………」
とても愛しまれている感覚に陥る。
頑なな心はまだ、錯覚だと叫ぶけれど、でも…
…誰かがその封印を抉じ開け、引っ張りあげてくれたら、
失ったと思っていたものを取り戻すことができるだろうか…
そうしたら私は、人を愛する事を受け入れられるの…?
熱る喉から、キョーコは声を振り絞る。
「……はい…」
ぎこちなく頷きながら、か細い声で彼に応える。
「お願い、します…敦賀さん…」
蓮は小さく笑って、目元に煌めく光を溢れさせ、キョーコの頭を自分の胸に引き寄せた。
「大丈夫。少しずつ一緒に演っていこう、最上さん」
そうして不安定な心は、水面に降り立つのをためらう月光のように臆病に揺らいで動き始める。
暗く澱んだ海に差し込む煌きが、すべて浄化するのはまだまだ先の話だけれど。
月への階段を昇るときが、近づいていた。
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