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注意!!本誌の超絶ネタバレありです。
コミックス派、本誌未読の方は回避願います。
また、勝手な解釈で妄想しておりますので、そういうのが苦手な方もお逃げ下さい。
本誌の展開がツボすぎて我慢できなくてすみません。
一時間半の突貫SSですみません…ああ…一ヶ月が長い…
次回更新は、菫の連載に戻りまする。
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「同じ事務所の人間として、俺は恥ずかしくて顔向けできない…っ」
「すっ、すみません…本当に、すみません…」
クドクドと、言いたいことを言ってから、本心の焦点から無理矢理引き戻した蓮に、キョーコは青くなって謝る。
――そう…そうやって、平謝りをするのは想定内の反応。
こんな事で、あっさり誤魔化されるなんて、彼女は相変わらず…
「心から、すみませんっ…」
「…」
俺の言ったことの、何一つにも引っかかりを感じないくらいに…それくらい、男として意識されていないってことなんだろう…
嫉妬心剥き出しで、あれだけ分かりやすい怒りをぶつけても、気が付きもしない。
萎縮して、そうやって謝るばかりの、事務所の先輩後輩の関係という認識でしか、ないんだ。
さっきの、「誓い」だってつきつめればそういうことだろう。
それでも――…
彼女の中で自分の優先順位が誰よりも高いと認識できたから…
彼女の身辺を守り固める枷として自分の言葉が有効だったことが、嬉しかった。
それはもう、それまでの手がつけられないほど荒れ狂ってた心を五割方静めるくらいには。
――わかっている。彼女が、誰のものにもならない枷に今の自分がなれているなら、このまま我慢しなければならないだろうことぐらい…ちゃんと、わかっている…
「今後は今回みたいなことでまた困るようになったら誰に言うより真っ先に俺に言うんだよ?」
先輩風をふかせてとどめとばかりにそう言うと、彼女の表情が変わった。
「――ん?」
さっきまであんなに萎縮していたのに。
――どうしたんだ…?
「…最上さん?」
何か言いたげな彼女に言葉を促すが、やはり黙ったままだ。
「敦賀さん」
ややして、その表情が一変する。
「それって つまり 私をどうにかしたいって 言ってます?」
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意外な切り返しに、蓮はその真意を図りかねる。
「だって、そうでしょう…?」
キョーコは、ふっと笑って批難がましい目を蓮に向けた。
「敦賀さんが今言ったことって全部もれなく敦賀さんが私にしているコトじゃないですか。そう言われてしまっても文句言えないですよ?」
「…」
何も言い返さない蓮に、キョーコはしたり顔になり更に切り返す。
「ほらっ、そんな気も無いくせに…それじゃあ説得力ないですから!私だからいいものを、そんなに干渉がすぎると他の人だったらうっかりすると勘違いしそうですよ」
「……勘違い?」
「ええ!敦賀さんは気がついてないでしょうけど…!面倒見の良さも、あまり過保護すぎると相手に過剰なほどの期待をさせる事になるとそろそろ自覚したほうがいいですから!常々そう思ってましたけど、今回のは特に酷いんじゃないかと思います!」
「…」
「大丈夫。分かってます、敦賀さんが私ごときに懸想しているなんて思ってませんけど、他の女性には控えめにしないと争いのタネになりかねませんからね?!」
――なんだ…それは…
干渉がすぎる?今回は特に酷い?
ちらりとも男として意識していないかと思えば、らしくもない挑発をしてきたりして…
――あげくに、そうやって地雷踏んでおいて逃げる気なのか…?
「…最上さんにしては、珍しく察しがいいと思ったら…」
長くため息をはいてみせるが、さっぱり意に介していない様子だ。
「…?」
「常々そう思ってた…?それは、薄々気がついていたってことなんじゃないのか…?」
「…敦賀さん?」
ナニをおっしゃっているのでしょう?と訝しげな彼女の表情が、胸の内側をざらつかせる。
「とにかく!今後はそこを心得て接したほうが敦賀さんの為、世の平穏の為!はからずも後輩としてそう助言させて頂きたいわけです!」
キョーコの無防備さに、思わず、くすりと口の端にだけ、笑みが漏れる。
俺の言っていることを少しも理解していないじゃないか。
――挑発しておいて、知らぬふりなんて、それはないんじゃないのか…?
「………へえ…?分かった。じゃあ、最上さん以外には、絶対に言わないから」
「え?ええと、そうではなく、私も含めて全般的にそうして頂ければ…」
「でも、そもそも俺が過保護に干渉するのは最上さんだけなんだけどね」
「…っそれは…!あの、もしかして、私はそこまで手のかかる後輩だということなんでしょうか…!?」
「――手のかかる後輩?いいや、それ以上だね。迷惑きわまりない」
「!」
「――君は、本当に、迂闊だね。先輩のスタンスを…自分からそれをぶち壊すような真似をしているのに、気がつかないなんて」
蓮が、キョーコに向かって身を乗り出す。
「もしかして、俺に過剰な期待をしてる、とか?」
「…………え?」
キョーコが座っている一人がけソファの両脇に両手を付き、その体を囲うようにして蓮はゆっくりとキョーコに顔を近付ける。
「押したら、いけると思わせたい?」
次第に詰まっていく間隔に、キョーコはやっと、なにか会話の流れがおかしいと気がつく。
「…?!あの…?敦賀さん?」
「分からないかな…」
キョーコの視線を捕らえて、蓮は艶やかに瞳を揺らして笑う。
「今すぐ、最上さんを、どうにかしたいって、言っているのに――」
「ああ!お二人ともここにいたんですね!」
「!!」
キョーコが勢いよく立ち上がったところへ、場違いに明るい声が響く。
「探しましたよっ、飯塚さんのインタビューが終わりましたので…って、あ、京子さん?!」
真っ赤になった顔を隠すように深く俯いて、逃げようとするキョーコだったが、その手首をすかさず掴んで蓮は爽やかに微笑む。
「最上さん?何処に行くつもり?ほら、インタビューの順番が来たって」
「あ…」
「言ったよね…?事務所の恥にならないよう、俺と一緒にちゃんとしたインタビューを受けてもらうって」
「っ…」
顔を上げようとしないキョーコを、蓮はにこやかに促す。
「じゃあ、行こうか?」
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