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菫色の恋 0 花影


交差する透き影


黒ではない、光を混ぜた、蒼紫の影


交わり、重なるごとに


深みを増して埋もれていく












影は濃くなり菫になる


 
臆病な色合いに浸されて


ただひたすらに


想いを過去へと沈めていく








誰にも知られない花の影に


そのまま沈めて


紫の花に隠された真意を


永遠に





























古い屋敷の階段を昇っていく。

一段、一段、踏みしめる都度に、ギシギシと、足元で苦しげな音が鳴る。

軋む。一つの仕草、一つの言葉を、踏み締める度に、不愉快な音は大きく大きく響いていく。

内側から引っ掻くような音。階段の途中で立ち止まる。


音に堪えかねて、手にしていた花を、ぐしゃりと握り締めた。




そうしていくら花弁を毟ってみても、見つからなかった。

欲しくて、欲しくて堪らなかったもの。


鳴り止まない音を消し去る、たった一粒の種子。











求めるものは得られず、欲するものは増えていく。

彼女は俺に何を求めているのだろう。

届けられた花束と、小さなカードに添えられた言葉。

それだけでは、何も心を満たすことはできないのに。







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